「すべて、さいなら」。元秘書の女性からセクハラで刑事告発された翌日の7月9日に自殺した朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長(享年64)は、信じられないほど軽い口調の遺書を残していた。人権派弁護士から市民運動活動家、政界進出へと、韓国民主化運動の発展とともに権力の階段を上り続けたカリスマ的リーダーとしてのイメージとはかけ離れた人生の終わり方だった。
韓国の市民社会は「不可解な死」をまだ受け止め切れていない。セクハラ防止策を全国に先駆けて導入してきた市長が、部下を性的な癒やし相手のように見て接していたことが第一の驚きだ(具体的内容は後述する)。さらに、元秘書が市幹部に助けを求めていたものの、それが数年にわたり放置されてきたことでダブルのショックとなった。女性団体は「市長が亡くなれば、構造的問題がなくなるわけでも、被害者の人権が回復するわけでもない」と訴えている。政治的には進歩的でも、男尊女卑的な意識や慣習を脱皮できずにいる「民主化運動世代」の意識が、公然と批判される事態となった。
不可解な死、検死結果も公表なし
遺書は市長公邸の机の上で発見された。短いので、まずは全文を紹介する。
「すべての方々におわびします。人生をともにしてくれた方々に感謝します。苦労ばかりかけた家族には、ずっと、すまない気持ちだ。火葬して両親の墓にまいてくれ。すべて、さいなら」
最後は「アンニョンヒケセヨ」の省略形「アンニョン」で終わる。「さらば」「あばよ」と片手をサッと上げるイメージかと思ったら、韓国人記者に言わせると「そんなに格好良くない。60代が使うとは思えない軽い口調」だという。とりあえず「さいなら」と訳したが、「バイバイ」というニュアンスのほうが近いかもしれない。「すべて、さいなら」の「すべて」は、「すべての皆さん」の意味なのか、「人生のすべて」なのか、どちらにも読める。
インターネットの掲示板でも「最後の言葉は違和感がある」「まるで捨てぜりふみたい」と話題になった。市政もトラブル処理も全部投げ出したという事態の重みと、遺言の表現の軽さに、ギャップを感じる人が多いようだ。
遺書そのものにも違和感がある。ソウル市は10日、公邸の机の上にあった半紙の遺書の写真を公開した。半紙の横に、日本製の筆ペンとインク用の小皿が整然と置かれている。インクが不要な筆ペンの横に、なぜインク用の小皿を置いたのだろうか。筆跡をみると全体が均等にかすれていて、インクを使った形跡は見当たらない。本当に、自分に対する刑事告発を知った後に絶望して書いた遺書なのかと疑いたくなるほど、見た目が美しく整っているのだ。
朴氏の遺体発見時の状況や死因、検死結果は、今も公表されていない。監視カメラに残った最後の記録は9日午前11時前、青瓦台(大統領府)の裏山に向かう公園付近のものだという。青瓦台付近は1968年に北朝鮮特殊部隊による襲撃事件が起きた経験を踏まえ、監視カメラが張り巡らされているはずなのに、そこから山中の遺体発見場所まで約1.5キロを歩いた際の撮影記録がないというのは不思議だ。
文在寅政権は不動産価格高騰への対策で苦戦していて、ソウル市が次世代に緑を残す都市計画の一環として定めた「グリーンベルト」(開発制限地域)を一部解除して公共住宅を建設するよう、7月初めから市への説得作業を本格化させていた。そんな中での死だった。朴氏の死後、文政権はグリーンベルト解除を断念した。セクハラ疑惑だけが死因ではなく、文政権との葛藤が背後にあるのではないかと、保革双方から臆測が飛び交う。次期大統領候補と目される朴氏が与党・共に民主党の主流派からみて邪魔者だったという見方もある。
特別市葬を巡る攻防
朴氏の死を巡る確定情報が欠ける状況の中、ソウル市は朴氏の葬儀を特別市葬で営むことを決めた。日本の通夜にあたる出棺前の弔問期間は通常より長い5日間、出棺・告別式を含む葬儀費用10億ウォン(約9000万円)以上を公費でまかなうと報じられた。野党各党だけでなく与党議員の一部も、公務中でもない不名誉な死を遂げた市長の葬儀に対する公費支出に反対し、弔問を拒否。青瓦台の請願サイトでは、特別市葬の反対を求める署名が58万人を超えた。
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July 25, 2020 at 05:01AM
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ソウル市長の常習セクハラを放置した民主化世代の死角 | 韓流パラダイム | 堀山明子 - 毎日新聞
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