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逃げの回答→余裕の笑み 記者が見たIOCトップの心中 - 朝日新聞デジタル

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 開催か中止か。来夏の東京オリンピック(五輪)の運命を握る「ボス」、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が日本にやってきた。

 この数年、私はバッハ会長やIOCを取材してきた。

 「東京五輪中止、決まりかな」。突然そんな思いがよぎったのは、5月14日の理事会後の記者会見のときだった。

 現在住んでいる英ロンドンは最初のロックダウン(都市封鎖)の真っ最中だった。窓の外を眺めていても人が通る気配はない。

 自宅からIOC理事会後のオンライン記者会見に出席していた。新型コロナウイルスの影響で東京五輪延期が発表された3月24日以降、初めての理事会だった。

 スクリーン中央で、バッハ会長が話している。IOCが最大で8億ドル(約837億円)を追加負担する対応策を承認したことが、一番のニュースだった。

 だが、今までの記者会見とは雰囲気が違う。

 慣れないオンライン形式だからかと考えた。この日は記者は直接発言できず、テキストで寄せた質問を広報部長が読み上げ、バッハ会長が答えていた。

 でも、違和感の正体が次第に分かってきた。最重要課題であるはずの東京五輪関連の回答に、「熱」が感じられなかったのだ。

 「1年2カ月先のことは分からない」「結論づけるのは早すぎる」

 バッハ会長に久しぶりに質問できる機会とあって、記者会見に出席した記者は約300人に上った。さらに会見の2日後には、サッカーのドイツ1部リーグ再開が控えていた。欧州の主要リーグでは最初の試みで、同リーグは50ページ以上に及ぶ対策の指針を公表していた。

 スポーツ界が一歩前に進む局面だ。記者の多くが五輪の動きにも注目した。発表された追加対応策の内訳や、東京五輪への具体的な検討事項を一つでも知りたいと質問を送っていた。

 それでも「臆測に油を注ぎたくない」と抽象的な回答に終始し、険しい顔も浮かべた。途中からは「自分より詳しいから」と、両隣にいた幹部に答えさせる一幕もあった。

 バッハ会長は大事を前にして、言質を取られたくないのかもしれない――。そう思った私は、近日中の中止発表を覚悟した。

 その予想は今も外れたままだ。

頼みは「Toolbox(道具箱)」

 今月11日のオンライン記者会…

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