衆院予算委員会で答弁する安倍晋三首相(2020年2月28日)。
衆議院インターネット審議中継
安倍首相が2月26日に急きょ発表した、全国の小・中・高校などへの「臨時休校」の要請をめぐって波紋が広がっている。週明けの3月2日から春休みまでという、突然かつ長期間の休校要請に当事者である児童・生徒、保護者、学校関係者の間には戸惑いが広がり、対応に追われている。
28日の衆議院予算委員会の審議の中でも、安倍首相が急遽休校を要請した根拠について問う動きがあった。
宮本徹議員(日本共産党)は、政府が休校の効果や影響について専門家会議に諮問していないと追及。専門家から「あまり意味がない」「国民に負担を強いる」など苦言が相次いでいることを紹介し、休校要請の「エビデンス(根拠)はなにか」と質問した。
これに対し安倍首相は、専門家会議が24日に出し、25日発表の政府の基本方針の土台となった「これから1~2週間が急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際となる」という見解が根拠だと繰り返し主張した。
その上で「科学的、学術的な観点からは、詳細なエビデンスの蓄積が重要であることは言うまでもありませんが、1〜2週間という極めて切迫した時間的成約の中で、最後は政治が全責任を持って判断すべきものと考え、今回の決断を行った」と答弁した。
宮本議員の質問と安倍首相、加藤勝信厚労相の答弁の詳細は以下の通り。
「一斉休校を要請したエビデンスは?」→首相「時間的成約の中での政治決断」
衆院予算委員会で質問する宮本徹議員(2020年2月28日)。
衆議院インターネット審議中継
宮本議員:(2月)25日に(新型コロナウイルス感染症対策の)基本方針を発表した際は、学校の休校は感染の広がりに応じて都道府県で判断するということだった。ところが2日でその方針が変更された。感染者が確認されていない地域も多数あるが、なぜ全国一律(休校)に変えたのか。この判断変更の具体的なエビデンスについて伺いたい。
安倍首相:エビデンスは何かというご質問でございますが、専門家の意見を踏まえて、先日策定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」で示した通り、感染の流行を早期に収束させるためには、患者クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じるべきと考えております。
この基本方針に基づきまして、新型ウイルス感染症対策を講じており、現在、北海道や千葉県市川市、大阪府大阪市及び堺市など各地域において学校休業を行うなど、子どもたちへの感染拡大を防止する努力がなされておりますが、専門家の知見によればここ1〜2週間が極めて重要な時期であり、先手先手の対応が求められる状況と認識しております。
このため昨日政府としては、何よりも子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教職員が日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みに入るまで臨時休業を行うよう要請したものであります。
いまがまさに、感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であるとの認識のもと、政府としては対策本部を中心に日々刻々と変わる情勢変化の先を見通しながら、何より国民の命と健康を守ることを最優先にやるべき対策を躊躇なく決断し実行していきたいと、このように考えております。
宮本議員:ですから「この1〜2週間が大事だ、勝負だ」というのは、それを踏まえて25日の基本方針が出たわけじゃありませんか。
2日間で方針を変更するほど重大な、何か我々に知らされていないエビデンスがあったのかを知りたい。
国民の中ではなにか起きているのではないかと不安が広がっている。オープンになっていない感染者の広がりがあるのではないか、あるいは原因のわからない肺炎患者がどんどん広がっているだとか、何らかのエビデンスがあって、この2日間で判断を変更したということなのか。
安倍首相:先程申し上げましたように、ここ1〜2週間が極めて重要という専門家のご指摘を頂いたところでございまして、その中においては先程申し上げましたように、多くの子供達が集まる教室、あるいは通学の途上が考えられるのではないか。
こう思いますが、そういうリスクを減らし、新たなクラスターが発生することを、何よりも防がなければいけない。
そのクラスターが子どもたちの中で生じることは防がなければならないと、こういうことでもあります。
また、2009年ですかね。新型インフルエンザが流行した際には、兵庫県、大阪府等で学校を休業し、それがある程度の効果を発揮したという経験もあるわけでございます。
これは宮本委員がおっしゃっているのは、どこかで発生したらやるのかということでございますが、我々はまさに先手、先手でやるべきであろうと今回は判断し、全国一律という判断をさせていただいたところでございます。
まさに、この科学的、学術的な観点からは、詳細なエビデンスの蓄積が重要であることは言うまでもありませんが、1〜2週間という極めて切迫した時間的成約の中で、最後は政治が全責任を持って判断すべきものと考え、今回の決断を行ったところでございます。
「なぜ専門家会議で議論しなかったのか?」→首相「政治的に判断」
衆院予算委員会で答弁する安倍晋三首相(2020年2月28日)。
衆議院インターネット審議中継
宮本議員:「政治が判断したんだ」と。エビデンスについては中身の話が全くなかったわけでありますが。
専門家会議を設けたわけじゃないですか。ところが報道を見ると、専門家会議での議論を踏まえたものじゃないんだ、政治判断だと言う話が、専門家会議のメンバーからもなされる状況。
そして、専門家会議のメンバーの方々の言っていることもいろいろなわけです。(東北大の)押谷(仁)教授は「学校でクラスターが発生しないとは断言はできませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです。一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない」と(Yahoo!特集 「専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ」2月26日)。
あるいは岡部先生(川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長)は「全国一律に小中高校の休校を要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」(NHKニュース「休校要請 専門家「評価難しい」2月27日)と。
専門家会議の皆さんも、いまそういう対策がベストなのかと言ったらそうではないという意見もたくさん出ている。なぜ今回の判断をするにあたって専門家会議でしっかり議論されなかったのか。
*編注:学校の一斉休校について、専門家会議のメンバーなどからはほかに以下のような意見が出ている。
「人から人への感染を防ぐという意味では、実施しないよりは感染者が少なくなる可能性はある。ただ、感染が起きている地域での休校は感染を広めないためにはよいと思うが、感染が起きていない地域で同じ対応をとることにどれほどの効果があるかはわからない。子どもたちが外に出歩き、友だちと遊んでしまっては効果は下がるだろうし、現時点で評価することは難しい」(吉田正樹氏(東京慈恵会医科大学)/NHKニュース「休校要請 専門家「評価難しい」2月27日)
「学校は、互いに近い距離の中で生活を共にするため、感染しやすい環境で、学校で感染した子どもが同居する高齢者にうつすリスクがあり、最も警戒する必要のある場所だ。インフルエンザでは、学級閉鎖などをすることで局所的に流行がおさまることから効果的で現実的な対策の1つであるといえる。本格的な流行が懸念される中で、子どもも高齢者も両方守ることにつながる措置として評価できる」(賀来満夫氏(東北医科薬科大学特任教授)/NHKニュース「休校要請 専門家「評価難しい」2月27日)
安倍首相:これにつきましては、まさに専門会議においてここ1〜2週間が瀬戸際であり、正念場であるという判断がなされたわけでございまして。ここにおいて、1〜2週間において、いわば感染拡大を防止できるかということが問われていると。
何をするかが問われているという判断をされた中において、そこでこちらが何をするかということでございます。そこでさまざまなご意見があることは承知をしているところでございます。
その中において、我々はやはり子どもたちの健康と安全を守ることを最優先にしなければならない、こう考えたところでございます。
もちろん、いま委員が言われたように子どもの感染は少ないということをおっしゃったわけでございますが、これは少ないということは、子供に発生していないということではもちろんないわけでございます。事実、発症例も国内でもあるわけでございます。
つまり、それが広がってからでは我々は遅いと、こう考えたところでございまして。今回はこの1〜2週間こそが正念場であるという専門家の皆様のご意見を受け、そして政治的に、政治として判断をさせていただいたところでございます。
※編注:安倍首相は学校の一斉休校を要請した根拠ついて、専門家会議が24日に出し、25日の政府の基本方針の土台となった「これから1~2週間が急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際となる」という見解を判断の根拠とした。
しかし、専門家会議メンバーの岡部信彦氏はNHKの取材に対し、「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」と、政府から見解や意見を求められておらず、専門家会議でも議論がされていないと証言している。
さらに、公衆衛生の専門家で国際医療福祉大学の和田耕治教授は、BuzzFeedの取材に「今のタイミングで、ここまで社会への影響の大きい対策をやるならどんな根拠をもってやるのかきちんと示さなくてはなりません。教育界も、産業界ももっと政府に尋ねた方がいいと思います。本当にそれをやって意味があるのですね? 今だけなのですね?と聞いておかないと。こうした根拠についての議論はもう少しした方がいい」と苦言を呈している。
安倍首相「要請は法的拘束力を有するものではない」
衆院予算委員会の様子(2020年2月28日)。
衆議院インターネット審議中継
宮本議員:先程来「政治の判断だ」と繰り返されるわけですが、感染症対策ですから何よりも専門家の知見を大事にするのが政治の姿勢としても必要なことだと思いますよ。
今回のこの対策が、社会の負担を上回るだけの効果が期待できるのかという声も上がっているわけであります。
学校は休校で保育園、学童保育は開くと、学童保育に子どもたちはたくさん集まると。そうすると感染拡大防止上それほど効果があるのかという声もあがっている。ちなみに、学童保育と比べて学校のほうが感染リスクが高い、低いという判断の根拠などはあるんですか。
加藤厚労相:これは委員にご承知、ご理解いただいている通り、感染拡大をする中においても、それぞれ皆さんは日常の生活を暮らしておられるわけでありますから。
その、日常の暮らしというものをどう維持していくのか、同時に感染拡大の観点から何をすべきなのか、まずはそのバランスということで判断させていただいて。
先程申し上げましたけど、保育園はもともと休みという形態がないということ、それぞれ預かっておられる方はみな働きに出ておられること、そういったことを踏まえて保育園においては感染防止策をすでに指示、こういう感染防止をしてほしいと申し上げております。
それを徹底していただきながら、ただ地域において感染が出た場合には、もちろんそうした保育園においても休園することは当然になってくるわけであります。
安倍首相:学童保育と変わりがないのではないかという先程のご質問でございましたが、これはまさに学童保育が必要となるのは低学年の子どもたちなんだろうと思います。
そして、例えば福岡の例がございますが、市長からもお話を伺ったところでございます。まさに一律で対応しただいた場合は、教室として高学年の皆さんが使っている教室も(学童保育に)使う。
あるいは学童保育的な形で学校でお預かりする人数もある程度限られるわけでございまして、一つ一つの教室についての子供の数は相当、通常の授業とは人数は圧倒的に少なくなるわけでございまして。
学校の先生にも休業になる中でご協力を頂きながら対応していただくことができるのではないかと、そういう対応を行っていくというお話を伺っているところでございまして。
そういう意味においては、違う対応が状況は違うといういうふうに、我々は考えているところでございます。
そこで法的根拠についてのご質問がございました。昨日の対策本部で決定した学校における全国一斉休校については、国としてここ1〜2週間が感染の拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であるとの認識のもとおこなった要請であります。法的拘束力を有するものではないということでございます。
政府としては学校を設置する地方公共団体や学校法人等において、この要請を受けて子どもたちの健康、安全を確保する観点から検討し適切に対応していただくことを期待をしているところでございまして、要請であり法的拘束力を有するものではございません。
「学童保育の体制が整うのか?」→加藤厚労相「経費は対応」安倍首相「地域で柔軟な対応を」
衆院予算委員会で答弁する加藤勝信厚労相(2020年2月28日)。
衆議院インターネット審議中継
宮本議員:法律上は学校の臨時休業を判断できるのは、学校の設置者ということになっているので当然法的拘束力はないわけですが、現場が柔軟に判断できるようにするというのが大事なことだと思います。
その上で、共働きやひとり親で仕事を休めない場合に、子供の預け先の体制をすぐにつくれるのか。学童にしろ放課後デイ(放課後等デイサービス)にしろ、長期休みのときはアルバイトを募集して体制を作っているところが多いわけですね。
そんな中で、3月2日からと言われてもとても体制が組めない。とりわけ放課後デイなんかで言えば看護師さんの確保、給食の手配なんかもあるわけですよね。そういう点は、どうお考えですか。
加藤厚労相:児童クラブで言えば、通常であればこの時期は平日への対応ということを、今回は春休みと同様のお願いすると。
また放課後デイであれば、できるだけ長時間の対応をお願いするということでありますから、当然人的な担保が必要になってくると思います。
これはまさにそれぞれ皆さんにお願いしていかなければいけない。当然人的担保等をすれば当然経費がかかるわけですからその経費に関しては、私どもしっかり対応させていただきたいと思っています。
宮本議員:その人的担保をつくるためには時間がかかるわけです。その辺の総理の認識は。
安倍首相:当然、この対策を発表させていただいた対策について、検討してきたわけでございまして、いま厚労大臣からも答弁させていただきました、そうした課題があることは認識しているところ。
さまざまな課題については政府としても対応していきたい、支援もしていきたいと考えているところ。これは地域地域において当然、対応は地域のさまざまな事情等もあるわけでございますので。
その事情に応じて柔軟な対応をされる、柔軟な対応ができるという形で進めていかなければならないと思います。
まさに地方自治体がこれをうけて、各地域に置いて対応していただきたいとこういうことでございますので、さまざまな柔軟な対応をしていただけるものと考えております。
「保護者が医療、介護従事者の場合は?」→加藤厚労相「施設同士で連携強化を」
宮本議員:放課後デイについて、もう一点。病弱な子供もいて安全管理上の不安という声も聞く。リスクも高い子供もいるので締めるという判断をされる場合も、こういう中で放課後デイを閉めるという判断をするところもあるかもしれません。
現に休校をやっている地域でそういう話を伺っている。そうすると、その放課後デイには補助金も入らないし、休業補償も職員に対してできなくなってしまうのではないかと不安な声もある。どう対応するか。
安倍首相:放課後デイサービスについては、保護者が仕事を休めない場合に自宅等で一人で過ごすことができない障害のある児童がいることも考えられることから、原則として開所し、可能な限り長時間開所をしていただくよう昨日自治体に依頼を行いました。
また開所にあたっては、長時間の開所に対応した高い単価を算定可能とするとともに、職員の配置等について柔軟な取り扱いを可能とし、定員を超過した受け入れを認めているところでございます。
加藤厚労相:総理が申し上げたことを基本としながら、委員の質問は休業した場合の話だと思います。都道府県等から休業の要請を受けて休業した場合は、利用者の居宅や電話などで健康管理や相談支援を行えば、通常の報酬の対象になる。放課後デイサービス事業所ですが、通常の報酬の対象にすることにしています。
宮本議員:しっかりと徹底していただきたいと思います。それから医療、介護、福祉の体制を崩壊するのではないかとう不安がある。
総理はこうした措置に伴って生じる様々な課題には責任を持って対応してまいりますとおっしゃったわけですが、この医療現場やあるいは介護現場、福祉の現場というのは、ただでさえ人出不足なわけでありますが、先程来の議論でも帯広厚生病院の話も出ている。
実際、人手不足で職場が回らなくなっている現状がすでに起きている。どう対策するか。
加藤厚労相:これは地域、地域、また施設、施設で違うと思っております。ひとつは、ある施設が足りなくて他で補っていただけるのであれば、そういった連携を強化していただきたいということもお願いしております。
一時的に本来あるべき定員(医療法に基づく人員配置標準)から減ったとしても、新型コロナウイルスの関係で従前どおり定員がそこにきちっとしていて、たまたまその人が新型コロナウイルスにかかっているかもしれないと休んだり、あるいは今回の学校(の休校)で保護者ということで休んだり、そういったことで一時的に店員が不足しても定員算定上は減算しないという対応を考えております。
安倍首相:医療や福祉の分野等も含めてですね、仕事を持つ親が子育てとの両立を図れるように、原則として保育所や放課後児童クラブは引き続き開所していただくこととして、27日付けで地方自治体に通知をしているところであります。また子供を持つ保護者にも十分に配慮して対応してまいりたいと思います。
また子育てをしながら働く方々について、安心して休暇を取得できる環境を整えていただくことも重要でありまして、26日に厚労相、経産相、国交相から日本経団連等のトップの方々に直接要請をおこなっているところであります。
今後とも事態の状況変化を見極めながら、仕事を休んだ場合において働く方々の不利になることのないように、雇用調整助成制度の拡充、保管なども含めて検討を進めてまいりたいとこのように考えております。
宮本議員:以前の質問で、所得の保障でパートの方などの補償も考えているとお話がありましたが、フリーランスの方などへの補償も必要になってくると思いますが、その点だけ最後に伺いたい。
安倍首相:先ほどお答えをさせていただいた通り、働く方々の不利になることのないように、雇用調整助成制度の拡充、保管なども含めて、さまざまな対応を含めて検討を進めてまいりたいとこのように考えております。
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February 28, 2020 at 05:15PM
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