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オハイオ州からニューヨークの窮地を救うために応援にやってきた看護師のブルックリン・ヘイゼルさん
「最初は誰かが銃で撃たれでもしたのかと思いました」
米オハイオ州コロンバスからニューヨーク市に21日間限定の「助っ人」としてやってきていた看護師のブルックリン・ヘイゼルさん(31歳)は、2020年4月22日に迎えた最終日の様子をこう振り返って笑う。ヘイゼルさんが勘違いしたのは、勤務を終えて病院の外に出ると、消防車やパトカーが何台も並び、大勢の警官や消防士たちに出迎えられたから。
大勢の警官や消防士に見送られてニューヨークを後にした
「でもそこにいたテレビ局のリポーターが、皆、あなたたちにお礼を言うために集まっているんだよ、と教えてくれました。田舎町から出てきた私にとっては信じられない光景でした」
助っ人看護師たちが乗り込んだバスはその後、まるで大統領でも乗せているかのようにパトカーに先導されて市内を移動した。
4月27日現在、新型コロナウイルス感染による死者数が5万5000人を超えた米国。中でもニューヨークは他に類を見ない感染爆発を経験し、同日までに全米の合計の3割を上回る1万7000人以上の命を失った。ピークは4月第1~2週にかけて。4月1日に1日当たりの死者数が400人を上回ると、最大時で799人を記録した。なお、25日には4月で初めて1日当たりの死者数が400人を下回り、減少を続けている。
今回から2回にわたり、そのピークを支えるために州外から応援に来ていた看護師たちが見た「医療崩壊現場の実情」を取り上げる。初回の主人公は、前出のヘイゼルさん。州外出身だからこその客観的な目で見たニューヨークの医療現場は、想像以上に残酷で、かつ改善への示唆にあふれていた。医療関連の企業はもちろん、ITや製造などあらゆる分野の企業に勤めるビジネスパーソンに、生きることの意味だけではなく新規事業のヒントも与えてくれるはずだ。
なぜニューヨークへ行こうと思ったのですか。
ブルックリン・ヘイゼルさん(以下、ヘイゼルさん):ニューヨークでは新型コロナウイルスの感染拡大が深刻で、看護師の手が足りていないとSNS(交流サイト)で知ったからです。すぐに同僚と、21日間の契約で働きに行こうと決めました。
普段からPRN(医療現場の必要に応じて1日単位で勤務する認定看護師)として働いているので、短期で働くのは慣れています。実際にニューヨークに滞在したのは4月3日から23日まで。23日の夜遅くに同僚とレンタカーでオハイオまで帰ってきました。
(編集注:米連邦政府の緊急事態管理局=FEMAが資金を提供し、医療従事者の有志を新型コロナと闘う地域へ送り込む制度が始まっていた。旅費や滞在費はもちろん給料も支給される)
乳児のお子さんがいるそうですが、ご家族が反対しなかったのですか。
ヘイゼルさん:私のパートナーは軍人経験もある警官で、こういった社会奉仕への理解がありました。ちょうど新型コロナで2週間ごとの交代勤務になっていたので、息子の面倒を休みの期間に見てもらうことができました。タイミングが良かったのです。
ニューヨークでの体験はいかがでしたか。
ヘイゼルさん:特に最初の1週間半が過酷でした。
私が勤務したのはニューヨーク市のブロンクス地区の病院です。もともとニューヨークの病院がどのように運営されているのか知りませんが、ER(救急救命室)の状況は本当にひどいものでした。
モノが散乱、トイレも足らず……
とにかく不衛生なんです。病室も廊下も患者さんであふれかえっていて、本来の収容人数を超えて1つの部屋に3人も4人も押し込められていました。患者さんにプライバシーなどありません。モノが散乱していて、トイレも足らないので、その辺に便器が置かれ、患者さんたちは人前で用を足さなければなりませんでした。
そんな状況なので、自分が担当する患者さんを探そうにも、なかなか見つかりませんでした。どこに誰がいるかの把握すらできていないのです。患者さんによっては、ずっと何も処置されないまま放置されている人もいました。
現場にいた看護師の心理状態も最悪でした。看護師が患者さんに向かって怒鳴る。怒鳴られた患者さんも怒鳴り返す。忙しいからそうなのか、状況が悲惨だから精神的に参っていたのか。理由は分かりませんが、看護師がナースステーションで人目もはばからず泣いているのを見たときは、「あり得ない!」と感じました。看護師が職場で涙を見せるのは、絶対にやってはいけないことだと思っています。
医師としてまだ「赤ちゃん」の新米医師が、最前線に立たされているのを見るのもつらいものでした。私には、彼らが責任を持った決断ができるようには見えませんでしたが、患者さんの生死を分ける重大な決断に迫られていた。とても見ていられませんでした。
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April 28, 2020 at 03:12PM
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「殺さないで!」が最期の言葉 応援看護師が見たNYの惨状(上) - 日経ビジネス電子版
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