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「大阪維新」は日本政治のApple的存在ー今後の政局を動かす”地域・ベンチャー政党”の本質を知ろう(上山信一) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

 政治の季節に入った。安倍さんが辞める。野党は再編の動き。11月1日にはおそらく大阪都構想の賛否を問う住民投票。この3つがどう相互作用するのか?もしや自公維の連立政権?憲法改正?政局談義はプロに任せ、今回は今後の国政を考える上で無視できない存在となってきた「大阪維新の会(以下「維新」)」のユニークな本質をベンチャービジネスになぞらえて解説したい。

〇10年を経て橋下改革の成果が次々に”見える化”

 「最近の大阪は元気になった」「街が綺麗になった」とよくいわれる。確かにこの10年で大阪は大きく変わった。市営地下鉄は料金を値下げし終電を延長。さらに2018年春に民営化した。府立大と市立大も統合され、都立大を抜き、全国最大の公立大学になった。ブルーテントが並んでいた天王寺公園は芝生広場に変わり、子供たちが歓声をあげる。寂しかった大阪城公園は観光客でにぎわい、街では2025年の万博に向けた準備が始まる。大阪もコロナ禍に苦しむ。だが吉村知事と松井市長のリーダーシップのもと町全体で苦難を乗り切ろうという意欲がみなぎる。最近の大阪は近年になく明るい。この背景には間違いなくこの10年大阪府と大阪市の行政を預かってきた維新の各種改革があるだろう。維新は地域政党といういわば新業態だ。よその地域の人にはなかなか理解しにくい。だが維新はこの10年、府知事と大阪市長のポストをおさえ、また両議会の筆頭政党となって大都市大阪の経営改革を進めてきた。そしてその成果が今、見えつつある。

〇自民党の改革派が”スピンアウト”して誕生

 10年前、大阪はどん底の状態だった。失業率が高く、生活保護の受給者が年々増加。ひったくりなどの犯罪が頻発し、子供たちの学力も低かった。しかし大阪府も大阪市も深刻な財政難だった。じり貧が明らかだったが改革が始まらない。そんな大阪を何とかしようと2010年、松井市長(当時府議)が橋下徹氏(当時知事)や浅田均氏(現参議院議員)らと立ち上げたのが維新である。しばしば自民党に政策が似ているといわれるが自民党員がスピンアウトしたのだから似て当然だろう。そもそも維新は大阪ではこの約10年、ずっと与党であり、国政における自民に匹敵する存在である。だから安倍さんや菅さんも大阪維新とは特別の対話チャネルをキープしてきたのだろう。

〇初回選挙後に府議会議席の2割削減、報酬3割削減で”EARLY WIN”を獲得

 経緯を振り返る。維新は創設から1年強を経て2011年春の初の議会選挙でいきなり府議会の過半数を獲得し、かつ市議会でも第一党になった。だがここで手は抜かない。府議会議員の議席を2割削減、報酬も3割削減する「身を切る改革」から始めた。さらに一連の大阪府の橋下改革(08-11年)では各種団体への運営補助などを見直し、私立高校の無償化など現役世代の支援にお金を向けた。

 経営改革の世界では”Early Win"という考え方がある。これは大きな改革をめざす時に目に見えるわかりやすい成果を見せて、改革のフォロワーに安心、理解を与える手法だが、ベンチャーの大阪維新はまさにこれで抜本改革のEarly Winを示したといえよう。

〇「大阪都構想」という高い目標を掲げ、全くぶれない

 かつてホンダが中小企業の時代に宗一郎氏が「世界のホンダになる」と宣言し、皆が驚き、だが奮い立ったという逸話がある。維新が掲げる都構想(大阪市を廃止して大阪府を都にする。東京のような特別区制度に移る)はこれに相当する。政令指定都市を廃止し、再編するというのは前代未聞でその手続き法さえ存在しなかった。市議会は反対するに決まっている。政治的にもハードルが極めて高い。大阪市がなくなると既存政党は既得権益を失う。各種団体に支えられる自民党から共産党まで既存政党はこぞって反対する。だから決めて高い目標だがそれをビジョンに掲げた。そして、都構想を掲げて5年後に一度目の住民投票を行った。10年目に二度目の住民投票となる見込みだが、いずれも初志貫徹に向けた挑戦といえよう。

 

 なぜ「都構想」なのか。大阪の衰退と停滞の大きな原因は大阪府と大阪市の二重行政構造、つまり政令指定都市の大阪市が豊富な財源と権限で大阪府と同じような事業をやる仕組みにあった。そこで維新は都構想を掲げた。だが政令指定都市制度の見直しには法改正が必要だった。そこで維新はいわば”子会社”として国政政党(日本維新の会)を立ち上げ、与野党に働きかけて新法を作った。その後、数々の選挙や協議、政治的駆け引きを経て奇跡のような形で2015年5月に住民投票を実施した。ところが結果は僅差で否決。それから今日までの5年間、引退した橋下氏に代わって吉村洋文が大阪市長となり、次いで松井市長・吉村知事体制で今日まで改革を進めて来た。しかし都構想は諦めない。粘り強く、必要性を訴え続けている。

〇諦めず「バーチャル都構想」のもと地道に努力

 2015年秋、橋下氏は市長を辞任し政界を引退する。一方、都構想が実現できていない中、放っておくと将来、また府と市が対立する。そこであとに残された吉村市長と松井知事は「バーチャル都構想」体制で改革を進めることにした。これは、コロナ対策など大阪全体に関わることは何でも知事市長が相談して一つの司令塔の下で取り組む仕組みである。例えば大阪市立と大阪府立に分かれて非効率だった公衆衛生研究所、中小企業支援の組織(現・大阪産業局)、公立大学などを次々に統合した。また橋下知事の時代から府市一体で国と交渉し、伊丹空港の民営化と関西空港との統合、さらに2025年の万博の誘致にも成功した。

 

〇政党というより「都市経営カンパニー」?

 維新は地域政党であり、実務政党である。イデオロギーや抽象概念よりも大阪の都市再生という具体目標を探求する。もっというと一人当たりの所得向上、生活の質の充実、自立した市民づくりをめざす。その意味では都構想も実は手段である。なぜなら都構想とは行政組織の再編であり、企業で言えば他社との経営統合やグループ企業の再編に相当する。目標はあくまで大都市大阪の繁栄と持続可能性の探求である。だから都構想が2005年にいったん否決されても次善の策として「バーチャル大阪都」の体制で府市で機能がだぶる外郭団体や大学、独立行政法人などをこつこつ統合してきた。

 大阪人は子供の頃から親に「大阪は東京や京都とは違う。ぼーっとしてたら食べて行かれへんよ」といわれて育つ。維新はそんな大阪の都市経営の厳しい現実を見据え、設立当初から都市のビジネスモデルの刷新を考えてきた。また自らをも改革ベンチャー政党と位置づけ、お金も組織もないギリギリの過酷な環境のなかで組織を鍛えてきた。その意味で維新は、政党というよりも都市経営を目標とするある種の実務型カンパニーといえるのかもしれない。

〇政治業界の「ブルーオーシャン戦略」・・斬新な政党ビジネスモデル

 政党としてみた場合、維新は「改革ベンチャー政党」という日本で極めて稀な存在である。ベンチャーとしての尖がり、政党としての斬新なビジネスモデルの特性は随所に見られる。

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August 29, 2020 at 10:51AM
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