2020年08月12日13時21分
【香港AFP=時事】香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕された周庭(アグネス・チョウ)氏(23)は、10代から政治活動に身を投じてきた若手の民主派活動家の一人だ。中国当局は今、この世代の活動家らを着々と沈黙させようとしている。(写真は中国・香港の自宅から連行される周氏)
周氏は10日夜、報道陣のフラッシュを浴びる中、香港に新設された国安法専門の治安機関「国家安全維持公署」の署員らによって手錠を掛けられ、自宅から連行された。国安法が刑事罰を定めている「外国勢力との共謀」の容疑で最初に逮捕された反体制派政治家の一人となった。有罪判決を受ければ、同法の最高刑は無期懲役だ。
11日夜に保釈された周氏は記者団に「当局に対し、このようなばかげた政治的訴追の停止を求める」と述べた。長きにわたって中国本土の独裁的指導者らやその香港出先機関との対立を繰り返してきた経歴に、今回の逮捕が新たに加わった。
周氏は自らについて、政治に無関心なカトリック教徒の家庭で育ったと述べている。だが2012年、公立学校への「道徳・国民教育」導入計画に反対する若者主導の運動が立ち上がった。生徒らはこの計画によって、香港の教育が中国本土のように厳しい検閲下に置かれることを恐れていた。15歳だった周氏はこの運動に加わった。
生徒らによる大規模な座り込みが展開された結果、この計画は見送られた。これは抗議運動によって香港政府が譲歩を迫られた、まれな事例となっている。
周氏はこの運動を通じ、自分と同世代の10代の活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏と出会っている。
2年後の2014年、黄氏と周氏を含む学生らは反政府デモ、「雨傘運動」の中心的存在となった。この運動は香港での普通選挙実施の約束を中国政府が反故(ほご)にしたことに端を発し、79日間にわたって座り込みやデモなどの抗議行動が展開された。
雨傘運動は平和的に行われたが、成果は実らなかった。一方、運動の熱気が高まる中で、新たな民主派政治家の世代が形成された。
高度な自治を有する金融都市・香港に対し、中央政府は支配力を強めようとしていたが、この新たな民主派世代は中央政府をいら立たせる存在となり、中国共産党政権はますます締め付けを強化していった。
■国際社会の注目、日本語でも発信
周氏は黄氏や羅冠聡(ネイサン・ロー)氏、他の若手政治活動家らとともに民主派の政治団体「香港衆志(デモシスト)」の設立に一役買った。
天安門事件世代が中心だったこれまでの香港民主派とは異なり、この民主派の新世代は中央政府との対立をものともせず、香港をどう動かしていくかにおいて香港市民の発言力の拡大を強く要求した。
だが、その反動はすぐに表れた。2018年までに周氏ら香港衆志の政治家たちは、「民主自決」を掲げていることを理由に地方選挙への出馬を阻まれることになった。
周氏がこれまでに果たしてきた役割の中で最も成功したといえるのは、香港の民主化運動に国際社会の注目を集めたことだ。流ちょうな英語、広東語、そして日本語を話すことが、周氏の活躍の助けとなった。日本語はテレビ番組やインターネット動画などを視聴して独学で習得したという。
周氏はすぐに、特に日本のソーシャルメディアで多くのフォロワーを獲得した。日本語での投稿が中心となっている周氏のツイッターアカウントには、45万8000人のフォロワーがいる。
香港のツイッターでは11日午後時点で、ハッシュタグ「#freeagnes(アグネスを解放せよ)」がトレンドの1位となり、このハッシュタグが付いたツイート数は18万5000投稿を上回った。
また周氏が10日夜、自らの逮捕を発表したフェイスブックの公式アカウントのフォロワー数は19万2000人となっている。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕
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August 12, 2020 at 11:21AM
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