…と言っても、劇場の再開は来年(2021年)まで行われないし、プロフェッショナルスポーツは無観客で行われている。灯の消えたブロードウェイの劇場街や、観光客がいない5番街は、かつてのニューヨークとは変わりはてたありさまだ。
2020年8月17日に行われたクオモNY州知事の会見によると、NY州ではこれまで累計700万件のウイルス検査が実施され、16日時点の陽性率は全米の中で最も低く0.71%だった。陽性率は、10日連続で1%を下回っており,データに基づいて経済を再開させたことが機能している証だとされる。
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現時点の大きな争点は、9月からの新学期をフルリモートにするか、あるいは登校するか、その両者をかけあわせたハイブリッドな方法にするか、保護者が選択することだ。正解があるわけではないが、どの親も子どもにとってのベストを考えながら、道を探っている段階だ。
フルオープンとは言えないながらもNY市がざわついているのは、大統領選を11月に控えているからだ。世紀の大統領選を迎える、ニューヨークの街の様子を伝えよう。
レストランは屋外のみ、
半数が廃業か!?
アメリカ全体の死者は、なんと18万3000人を超える(現地時間2020年8月27日の発表)。カリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州での感染者数はニューヨーク州を超え、さらにジョージア州、ルイジアナ州、イリノイ州などでも感染拡大が止まっていない。アメリカ全体の感染拡大がピークを過ぎてフラットになるまで、死者が20万人を超えることになるだろう。
ニューヨークでは、マスクの着用はかなり徹底している。痛い目にあっただけに、市民もマスクを着けるのはニューノーマルとして受けいれている。一方、アメリカ各地では、「マスクをつけること」を拒否する人たちも少なくない。
テキサスなど保守的な地域では、政府にあれこれと規制されること自体を嫌う傾向があり、「マスクを着けない」のも自由の選択として主張する一派がいる。マスクを着けるか、着けないかで、政治的な議論になるというのは、アメリカにしかない現象だろう。
レストランは、NY市ではまだ屋店内での食事は許可されずに、道路に張りだした屋外のテーブル席でのみサーブされている段階だ。車道に張りだしたカタチで、屋外のテーブル席を作り、アウトドアダイニングが盛んになっている。デブラジオNY市長は10月まで、この屋外テーブルを許可するとし、NY市におけるニューノーマルとなっている。NY州の他の地域では、インドアダイニングが再開されたが、最大客数の50%に抑える指導がされ、アクリル板のパーテーションを装備するなどの工夫が見られる。
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現在、NY市のレストランの50%が再開できずにいると言われ、セレブシェフであるデビッド・ブーレイの「ブーレイ・アット・ホーム」や、トーマス・ケラーがハドソンヤードに出した「タックルーム」のようなトップレストランから、「ゴッサム・バー&グリル」「オレオール」「アクアグリル」のような地元で長く愛された名店、歴史あるナイトクラブ「コパカバーナ」も閉店した。
これが10月になったら、さらに多くの店が倒産に追い込まれると予想されていて、飲食業界はいかにサバイバルできるか、苦境に立たされている。
ニューヨークは犯罪率アップで80年代の再来!?
ニューヨークの街自体も、かつての活気は全くない。まず、ニューヨークから出ていく流出人口が止まらない。新型コロナ禍が始まった時点で、富裕層たちはハンプトンなどの別荘に逃げ、自国に戻った人たちや故郷に戻った人たちも多い。ニューヨークではホワイトカラーは依然としてリモートワークが基本なので、何も家賃が高いマンハッタン市内に留まる必然性がなく、郊外に移り住む人たちも少なくない。
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おかげでウエストチェスターなど、郊外の物件がたちまち値上がりした。7月におけるニューヨーク市のアパートの新規貸し出しは1万3000件以上で、これは過去14年間で最多。その一方で新規契約者は、23%減。
大手リアルエステート会社であるダグラスエリマンによると、アパートメントの売買契約は昨2019年の同時期比で54%減。これは過去30年間でもっとも大きな下がり幅だと言う。また、アパートメントの平均価格も17.7%下がった。マンハッタンを脱出したくても、アパートメントの価格が暴落して出るに出られないという人たちもいる。
一方、犯罪率は上がっていて、ことに発砲事件が増えた。
同年6月には270人が撃たれて、これは前年比の154%増となる。原因は不景気と、人目がないことだろう。マンハッタンはただでさえ人が少なくなったのに、夜ともなれば人通りもなく、私自身、夜は出かけたくない。アッパーウエストサイドでは、いくつかのホテルがホームレス収容施設になり、そのせいで環境悪化を心配する住人も多い。
ニューヨーカーにとっては犯罪の温床であった「80年代の再来」とか、「古き、悪しき時代への逆行」と危ぶむ声もあがっている。と言っても、ニューヨーカーはタフだ。86年からニューヨークに住むというアメリカ人女性はこう言った。
「80年代をここで生き抜いてきたから大丈夫。911同時多発テロのときも、ここにいた。だから、必ずまた戻ることを知っている」
「このコロナ禍が過ぎれば、また観光やエンタテイメントが街に戻って、たちまちニューヨークの活況もよみがえるだろう」、とは予想できる。
副大統領候補のカマラ・ハリスはここに注目
コロナ禍が影響を与えたのは、大統領選も同じだ。
2020年1月までは、「トランプ大統領が再選するのではないか」というのが大方の下馬評だった。ところが、コロナが発生してからアメリカが感染国のトップになってしまい、欧州諸国の感染が止まっても、いまだに第一波すら止まっておらず、感染防止に失敗した国になってしまった。
この原因として、トランプ大統領が初期段階で新型コロナを「いまに消える」と甘く踏んだことや、ファウチ博士との見解のズレがあったことに疑問を抱くアメリカ人は少なくない。Gallup poll(ギャラップ調査=アメリカ世論調査研究所が行なっている世論調査)では、トランプ大統領の評価パーセンテージが6月には38%まで落ち込んだ。それでも株価は悪くないので、現在は支持率40%越えまで回復している。
トランプ大統領はオクラホマ州のタルサでラリー(大規模集会)を再開したものの、集会スタッフ6人がウイルス検査で陽性と判明。この大会にマスクを着用せずに出席して、その後コロナ感染発症したハーマン・ケイン氏は亡くなった。一方、民主党の大統領候補となったジョー・バイデンは感染拡大を懸念して集会を開かずに、自宅からのリモートメッセージを続けていたのだが、力強さに欠け、あまりに地味な印象は否めなかった。
それがここに来て大きな話題をさらったのは、ジョー・バイデンが副大統領候補に選んだのが、カリフォルニア州のカマラ・ハリス上院議員だということだ。カマラ・ハリスは1964年生まれの55歳と、まだ若い。彼女の起用がなぜ、アメリカでは画期的な出来事かというと、まず副大統領候補として初の女性であること。そして初の黒人であり、南アジア系であるということ。さらにジャマイカ移民の父親と、インド移民の母親を持つ移民の子であることが挙げられる。
カマラ・ハリスはカリフォルニア州のバークレー生まれ、インド人の母は乳がんの研究者であり、ジャマイカ系黒人の父親はスタンフォード大学の経済学教授というインテリ家庭で育った。
「父はジャマイカから、母はインドから、高い教育を求めてアメリカに来たのです。しかし彼らを結びつけたのは、60年代の公民権運動でした」
とカマラ・ハリスはスピーチで語った。
両親はカマラと妹をデモに連れていき、デモを続けることは、自分たち、そしてアメリカの全世代にかかっていることだと説いた。「座ったままで、文句いうのはやめなさい、何かするのよ」と母親からと言われて育ち、「だから私は何かをしたのです」とカマラ・ハリスは語る。
ちなみにジョー・バイデンとカマラ・ハリスが最後に並んだ際のBGMが、カーティス・マンスフィールドの『Move on up』(ムーヴ・オン・アップ)だった。言わずとしれたファンクの名曲だが、「前に進め」と歌うこの歌は、公民権運動の象徴であった1965年の『ピープル・ゲット・レディ』と共に、市民運動の応援歌となっている。
77歳のバイデン候補が高齢であり、いささか頼りなく感じていた投票者にとって、カマラ・ハリスの若々しさとパワーは、良い刺激剤になったと言える。バイデン-ハリスは、副大統領候補発表後48時間以内に48ミリオンドルの寄付を集めた。そのうち15万人が初めての寄付者だ。
アメリカでは、あまり選挙でアジア系が取り沙汰されることはないのだが、「初のアジア系」ということでアジア・コミュニティーの後援が高まりそうだ。さらに言えば、カマラ・ハリスの夫ダグラス・エムホフは弁護士であり、ユダヤ系である。もし当選すれば、初の「Second gentleman of the United States」(副大統領夫君)となる。
カマラ本人はバブティスト系キリスト教徒であり、さらに母親のヒンドゥー系、夫のユダヤ系と網羅できるのが強みだ。民族的にもブラック、アジア、そしてカリビアンたちが親近感を持つ。
ミシェル・オバマ前大統領夫人は、カマラ・ハリスが選ばれたことの意義をSNSでこう伝えている。
「ブラックやブラウンの少女たちは『新聞やテレビを見る時に、自分と似た人がいないことに、小さい時から気づき、そして自分の高い希望を持たないように自己訓練する』のであり、だからこそ、それを変えるロールモデルになれる」
2020年8月17日から始まった民主党全国党では、憲法前文の言葉「We the People(私たち人民は)」を表題に、「コロナ危機」「銃規制」「環境問題」「ヘルスケア」「移民締め出しの緩和」といったトピックが取りあげられている。しかも、今回は党派を越えて、共和党のコーリン・パウエル、ジョン・ケーシックらもバイデン支持を表明した。また若い世代にむけて、ビリー・アイリッシュもパフォーマンスを披露した。
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同年同月19日に登場したバラク・オバマ元大統領は、今回の選挙は民主主義を守れるかどうかの瀬戸際になると強調。今回はアメリカの根幹として、「デモクラシー」を掲げているのが特徴だ。
そして正式に民主党の副大統領候補として選ばれたカマラ・ハリスは、スピーチの中で、まず権利のために闘ってきた女性たちを褒めたたえ、彼女が5歳のときに離婚してからシングルマザーとして、子どもたちを育てた母親について語った。
家族の価値を前面に打ち出し、ジョージ・フロイドら「構造的な人種差別」の犠牲になった人たちに共感を寄せ、法の下の正義と公平さを語りかけた。排除ではなく共感を軸に、カマラ・ハリスのソフトに正義を語りかける姿勢が際立っていた。一方トランプ大統領は、バイデン-ハリスはきわめて左翼だと批判。「銃を持つ権利」「治安」を守る自分こそ、アメリカ的だと主張している。
共和党側はバイデン-ハリスでは、「税金が高くなる」「治安が悪くなる」「移民が増える」「中絶が緩和される」「中国に対抗できない」といった論点を打ち出しており、さらに「米国大統領と副大統領は、生まれながらにしての米国市民でなくてはならない。が、カマラ・ハリスの両親は彼女が産まれた時点では、まだ市民権を取得していなかったので、その条件に当てはまらないのではないか」という意見も見られる。
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The Financial Times(ファイナンシャルタイムズ)による選挙予報では、2020年8月末時点でバイデン支持が50.5%、トランプ支持が42.1%だが、まだこの先の動向はわからない。民主党陣営は「民主主義」を掲げ、共和党陣営は「自由」を掲げて、アメリカのアイデンティティーを互いに競っている。11月の選挙戦の結果で、果して今後の4年間、カマラ・ハリスが体現するような移民主義が盛り返すのか? それともさらに自国主義を強めるのか? 世界の行く末を変えることになりそうだ。
黒部エリ
Ellie Kurobe-Rozie
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、ライターとして活動開始。「Hot-Dog-Express」で「アッシー」などの流行語ブームをつくり、講談社X文庫では青山えりか名義でジュニア小説を30冊上梓。94年にNYに移住、日本の女性誌やサイトでNY情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』など。
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August 27, 2020 at 03:57PM
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