伊勢大夢にとって、そこは奥深き“学びの森”なのだという。緑の人工芝の上に設えた日の当たらないマウンド。ライトスタンドの直下にある横浜スタジアムのブルペン。伊勢は日々、リリーフを務める海千山千の先輩たちの様子をつぶさに観察し、ときにアドバイスをもらいプロとは何たるかを修する。
22年ぶりのリーグ優勝を目指していたものの、厳しい戦いを強いられている今シーズンの横浜DeNAベイスターズ。そんな状況にあって、先行き明るい希望の存在の1人が開幕からブルペン入りしたルーキーの伊勢だ。
今季はここまで中継ぎとして14試合に登板し、防御率1.08(データは9月24日現在、以下同)と結果を残している。主にビハインドや点差がついた勝ち試合での登板ではあるが、最速154キロのストレートを武器に、新人らしからぬマウンドさばきで要所を締めるピッチングを見せている。
つい数カ月前まで大学生だったわけだが、今ではフルタイムのプロ野球選手として忙しい日々を過ごしている。生業となった野球。この環境の変化を伊勢はどのようにとらえているのだろうか。
「もっとバチバチしているのかと思っていたんですけど……」
「プロになったときから野球漬けになるのはわかっていましたが、試合が毎日あるなか、しっかりと練習もしなくてはいけません。リリーバーとして毎日コンディションを整え、試合へ挑むのは大変なことだと実感しています。それでもウェイト・トレーニングはできていますし、フィジカル的にはいい状態を保てています。ただ、ナイターやデーゲーム、また長い連戦もあるので、そこでどうやって気持ちを疲れさせないか、そこにはかなり気を遣っていますね」
学生時代とは異なり勝っても負けても次の試合はすぐさまやってくる。とくにリリーバーは、ブルペンに入り常に準備をしなければならない。遠征もあるなか、コンディショニングとメンタルの維持に苦労するのは当然のことだろう。
だがDeNAには石田健大をはじめ山﨑康晃、国吉佑樹、スペンサー・パットン、エドウィン・エスコバー、そして三嶋一輝など経験豊富な投手たちが顔を揃えている。先輩後輩関係なく気さくに言葉を交わしムードがいいと言われているDeNAのブルペンであるが、伊勢はそれを実感しているという。
「プロの世界はもっとバチバチしているのかと思っていたんですけど、そんなことありませんでした。皆さん普段はすごくリラックスしていて、出番が近づくと急にスイッチが入る。オンとオフがはっきりしているのが、いい状態を作るひとつのコツなのかなって。あと先輩たちが試合に入る前、どんなタイミングでどれぐらい投げ込むのかを見たり、ルーティンやコンディションに合わせた状態の作り方など、すごく学ぶ点が多いんですよ」
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