コロンビア大学医学部外科教授の加藤友朗氏 連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第14回。感染を抑え込んだニューヨークと第二波を招いてしまった日本。その違いを生んだものとは? 讃井將満医師と加藤友朗教授の特別対談第一弾。 「事実を正確・客観的にとらえ、理性的に判断・行動すること」 新型コロナウイルス感染症をめぐって報道がともすれば正確さを欠き、あるいは感情的になる中で、讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)は本連載でつねにその大切さを訴えてきました。そのために、集中治療の専門家として医療現場で起こっている事実を記し続けてきました。 讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長) 同じように、世論が不安や不満から感情的になっていることを危惧する医師がいます。コロンビア大学の加藤友朗教授です。 「いま日本は、コロナの恐ろしさを心配して政府の政策を批判する意見と、コロナの恐ろしさが過大に誇張されているとして報道の仕方を批判する意見に、極端に二分されている。そんな中、専門家はどちらの意見にもきちんと向き合って説明をする必要がある」 今回、加藤教授を迎えて意見を交換します(ヒューモニー編集部)。 加藤友朗(かとう・ともあき) コロンビア大学医学部外科教授。東京都生まれ。東京大学薬学部、大阪大学医学部を卒業後、1995年渡米。生体外腫瘍切除、多臓器移植、小児および成人の肝臓移植、肝胆道外科における世界的第一人者。
讃井 加藤先生はご自身も新型コロナ感染症に感染してECMOに乗るほど重症化したそうですが、いま体調はいかがですか? 加藤 ようやく体力が戻って普通の生活が送れるようになってきたところです。いまは1日に3km程度歩き、週に3回は1kmぐらいジョギングできるようになりました(※ 加藤教授はランニングが趣味で、ニューヨークマラソンを過去7回完走しています)。今月中には手術も始めようかと思っています。 讃井 後遺症(ICU後症候群:Post-ICU Syndrome、PICS)を心配していたので、安心しました。ICUでの闘病やPICSの体験談は、われわれICUスタッフにとってはきわめて貴重ですから、別の機会に詳しくお聞かせ下さい。 加藤 讃井先生は重症患者をたくさん診ているからよくわかっていると思いますが、あんなに急に重症化するとは思いませんでした。まだ新型コロナ感染症がどういったものかわかっていなかった時期ではありますが、私自身感染するまでは甘く見ていたところもありました。経験してみて初めてわかる怖さがあります。 知人、友人、家族が感染し、場合によっては亡くなってしまった──ニューヨークのような悲惨な感染爆発を経験すると、新型コロナ感染症に対して誰もが慎重になるし、行政の厳しい対応を許容するようになります。逆に、日本のように感染をうまく抑えた国では新型コロナ感染症の本当の恐ろしさを理解するのは難しいかもしれません。いまは身に染みて怖さがわかりますが、もし私が日本にいてニューヨークのようなパンデミックを経験していなければ、おそらく全く違った見方をしていたでしょう。 讃井 日本は甘く見ている? 加藤 そうですね。ニューヨークから見るとそんな気がします。その背景には、やはり3月から4月の第一波でうまく抑え込めたことがあると思います。 讃井 抑え込めたといっても、実際の医療現場はぎりぎりでした(第2回参照)。それでも結果的に医療崩壊にいたらなかったのは、医療アクセスの良さ、マスクをする習慣、日ごろからの衛生意識の高さ、さらに血栓のできにくさ(アジア人は欧米人より血が固まりにくいとされる。それが新型コロナ感染症の重症化をおさえている可能性がある)など、さまざまな因子が作用したと考えられます。
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August 28, 2020 at 04:01AM
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